「このまま夢を諦めたら将来後悔する」と感じて大学卒業後に入所

 「声の仕事が向いてそう」という周囲の言葉を受け、大学時代に別の養成所に入ったものの、所属は叶いませんでした。そこで、普通に就職するか正直すごく悩みました。でも「このまま諦めたら絶対に将来後悔する!」と感じ、何かと並行して学ぶのではなく、養成所のレッスン中心で頑張ってみようと決意したのです。とはいえ、時期はもう3月頃。入所できる養成所は限られていて、数少ない選択肢のひとつが『シグマ・セブン声優養成所』。「もしここでダメならば、すっぱり気持ちを切り替えてまったく違う道を歩もう」と、ラストチャンスの意思で門を叩きました。ただ『シグマ・セブン声優養成所』入所時点で、目指す声優像ややりたい分野があったわけではなく、漠然とした憧れに近い感情しか持っていませんでした。それが、レッスンを受けたことで一変! やりたいことがはっきりと見えてきました。以前の養成所は週1回レッスンで演技が中心。対して『シグマ・セブン声優養成所』の基礎科は週3回レッスンで、カリキュラムも演技だけにとどまらない豊富な内容だったことが大きかったです。

ナレーションは「読む」のではなく「語る」。レッスンでこの意識を叩き込まれました

 養成所のレッスンを受けて、一瞬で虜になったのがナレーションです。感覚的なものでその「魅力」をうまく説明できないのですが、ひとりの世界にドップリ入ることが好きという私の性格的なものが理由かもしれません。

 ナレーションのレッスンは毎回楽しみで、気合の入り方が尋常ではありませんでした。「好きこそものの上手なれ」で、自分でいうのもおこがましいのですが上達のスピードも早かったと思います。反面、先生からあまり改善点を指摘されず、「もっと構ってほしいのに……」と寂しい思いもしました(笑)。だからといってレッスン中にやることがないわけではなく、ほかへの助言を自分に置き換えて学ぶ姿勢こそが大事なんです。

 これはデビュー後に気付いたのですが、ナレーターは基本的にひとりで収録するため、現場で誰かに助言を求めることが難しく、独力でクライアントの意向を適切に感じ取る必要があります。「明るくしたい」という要望も、言い方やニュアンスで加減が違いますよね。そこでポイントになるのが自分が持つ「引き出し」の多さで、その「引き出し」を作れた場所が養成所のレッスンです。先生のいろいろなダメ出しに接していると「人はこんな言葉遣いのとき、こうしてほしいんだな」と、段々理解できるようになりました。

 また、ナレーションレッスンで2年間いわれ続けたのは「『読む』のではなく『語る』」ということです。大事なのは、商品の受け手や映像を見ている「マイクの向こう側」にいる人に向かって話す。単独収録が多いナレーションでは、これを忘れがちで独りよがりになってしまうんですよね。デビュー当時は失敗が許されないプレッシャーでつい「読む」ことに注意が向いてしまいましたが、養成所で「語る」意識を叩き込まれたおかげで軌道修正できました。

 もちろん、ほかのレッスンでの先生の言葉も数えきれないくらい心に刻まれています。例えば、苦手なダンスレッスンでコソコソと後方で踊っていたら、「あなたは目立つんだから前に出なさい。目立つという個性は、タレントとして大事な要素」と注意され、「声優も人に見られるタレント業」という意識が芽生えました。表に出る機会が少ないナレーター業ですが、身だしなみに注意しないと、プロダクションの看板に傷をつけてしまいますよね。

 養成所の先生方は、十把一絡げではなく個人指導のようにレッスン生の細かい部分まで把握しています。そして、伸ばすべき長所、克服すべき短所をズバリ指摘してくだるので、その助言に従って努力すると上達が目に見えて、さらなるやりがいにつながる好循環が生まれました。

ナレーターはプロジェクトの最後を仕上げる役目。その責任の大きさが魅力です

 ナレーターは、企業、商品、サービスなど、世間に伝えたいことを表現した映像が制作され、その大きなプロジェクトの仕上げとして最後にナレーションを加える重要な存在です。いくら映像がすばらしくてもナレーションが不完全だと、プロジェクトの過程すべてをダメにしてしまう。その責任がナレーターにかかっているのは、プレッシャーであると同時に大きなやりがいです。しかも、クライアントの要望に応えるナレーションができた高揚感や充実感をひとりじめできます(笑)。

 また、扱う映像によって、癖を出したり、逆に声の存在感を極力消したりと、求められるナレーションがひとつとして同じではないという楽しさもあります。だからこそ、現場の空気感、いただいた原稿や映像の印象を大事にして、「ナレーションはこう」みたいな固定概念は作らないように臨んでいます。特に原稿を当日にいただいたり、事前の原稿から大幅に変更されるケースも珍しくないため、瞬発力と対応力が重要だと感じます。プランを固め過ぎると戸惑ってしまうので、仕事の準備は企業や商品の情報収集がメイン。そうした心構えやノウハウは、プロになってから自分で構築していったものです。

 個性が求められるナレーションは別として、私が目指す理想のナレーションは「主役はあくまで映像の中身」「映像の意図は伝わるけど、声の印象が残らない」というもの。そのバランスはいまも探し求めている最中で、取り組めば取り組む程、ナレーション道の奥深さを実感しています。

新しい可能性に出会える『シグマ・セブン声優養成所』では、積極的に動いたほうが絶対にお得!

 所属当初、プロダクション側はアニメで売りたい意向もあったみたいなのですが、自分がナレーター志望であることを主張したところ、意向をくんでナレーションのチャンスをいただけました。プロダクション側は各タレントの適性を見極めてくれる一方、本人の希望も尊重してくれます。これは養成所も同じ。先生方は、レッスン生の個性を生かす方向を模索し、質問すれば演技のことも仕事のこともなんでも答えてくれます。さらに、マネージャーがレッスンを度々チェックするから、直接話して業界事情を知る機会も豊富。こうした恵まれた環境で学べるのだから、自分で積極的に動いて意思をはっきり示せる人のほうが、絶対に得られることが多いです。

 ただ、レッスン生間でどうしても目的意識の高低に差が生まれます。レッスン生同士で仲良くするなというわけではなく、「人は人、自分は自分」と分けて考え、楽な方向に行かないように注意してください。私の時代は「何をするために養成所に通っているのだろう?」と疑問を抱くフワフワした意識の同期がいましたが、やはり脱落していきました。養成所は自分を甘やかし、いくらでも妥協できるんですよね。でも、仕事を妥協したりルーチンでこなすようなプロは生き残れません。だから、養成所時代に努力を怠らない姿勢を身に付けておくこと。私は特徴的な声ではないし、自分の持ち味もわかりませんでした。そこで、出された課題の克服にとどまらず、課題を自分なりに広げて、誰にも負けないクオリティを持ってレッスンに臨むことを心掛けていました。

 『シグマ・セブン声優養成所』入所時点で目標が明確ならば、それに向かって集中して学べばいいですし、私みたいに将来像が漠然としている人も全力で学んでいるうちに、きっと方向性が定まります。『シグマ・セブン声優養成所』は気付きが多くて、新しい可能性に出会えるから、「声優になりたい」という気持ちが本物か試すのに最適。動き出す前から結果を心配して頭でっかちになるより、まずは夢に向かって一歩を踏み出したほうが、まったく違う世界が見えるはずです!